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2011年3月16日 (水)

今原子炉で起きていること:炉内冷却が進まない本当の理由(その1)

今原子炉で起きていることは何が本当なのかよく分からない。

ただ報道内容と少しばかりの想像を加えてストーリーを組み立ててやることはできる。

私のバックグラウンドは、原子力工学、化学、冶金等ではなく、いわゆる仏文だ。

ただ、私はコンサルタントとして事実を集め、仮説を立て、それらを検証してきた経験がある。

今回はそのフレームワークで、何が起き、これから何が起きるのかを話をしていきたい。

以下、すべてはフィクションです。

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2011年3月11日 14時46分

東北関東大震災が発生。

マグニチュード9.0。

日本の原子力発電所の想定を上回る揺れだ。

しかし、帝都電力福島第一原発1-3号機、第二原発1-4号機が緊急自動停止。

40年前の設計とはいえ今回の地震の規模でも、正常に停止プロセスに入ることができた。

ただ、地震により発電所内の送電網が切れたためか、電力系統からの送電が止まる。

ほぼ同時に、発電所内に発電向けに2系統ある非常用電源であるディーゼル発電機が作動する。

ここでも緊急自動停止した原子炉は正常に冷却プロセスに入った。

しかし、15分後の15時01分、14メートルを超える大津波が福島第一原発を襲う。

別の原子力発電所のある女川では、15メートルの津波だったという。

福島の原発を守る防波堤は7メートルまでの津波までしか想定していなかった。

津波は原子炉建屋の側に設置されたディーゼル発電機を洗い流した。

ディーゼル発電機建屋は、原子炉建屋と違い、堅牢な構造になってはいなかった。

電子部品、機械に塩水はもっともよくない。

ショートやさびの原因になるからだ。

福島第一原発1ー6号機の中央制御室では、突然電源供給が切れた警報が鳴る。

通常40年前に設計された発電所の中央制御室は各系統ごとに無数のボタンが並ぶ。

古い中央制御室は初めてのものには、なにが何やら全く分からない。

全てがアナログである。

各系統ごとに、メーター、レバー、ボタンがあり、非常に複雑に見える。

福島第一原発は40年前の設計ではある。

これが今回の対応が遅れたひとつである。

古い中央制御室での操作は、慣れたオペレーターでなくては難しい。

各電力会社は古い中央制御室の訓練センターを残しながら、若手を訓練している。

しかし、実際は同じ発電所に長く勤務して慣れていないと操作には手間取る。

現在の先端の中央制御室は前面に主要情報が映し出され、手元のモニターではタッチパネル方式で、いつでも見たい情報を呼び出すことができる。

すべてがデジタルだ。

最新の中央制御室しか経験のないオペレーターは、古い制御室の操作はすぐには無理だ。

津波が襲った後の現場では、非常用電源の供給が切れるという想定しない事態にオペレーターが戸惑っていた。

真っ暗やみの中で、各計器からの情報もとることができない。

福島第一原発は制御機能を失った状態に入ったことになる。

現状把握ができないまま、発電所は本店に緊急用電源が稼働しない状況を報告。

本店の原子力担当専務には、発電所から地震発生後、正常に自動停止したが、非常用電源の供給が止まったとの報告が入る。

原子力担当専務は原子炉が制御不能になるという最悪の事態を想定し、直ちに社長に報告。

社長は当日出張のために大阪にいた。

地震のために新幹線も動かず、東京に戻ることができずにいた。

報告を受けた帝都電力会社社長は緊急に取締役を招集。

滞在しているホテルからの電話で取締役会に参加することになる。

取締役会では、原子力担当専務から福島第一および第二発電所の事態の報告を受けた。

取締役会で対応策を検討することになる。

原子炉は自動停止に入っていることから、非常用電源を投入することで再度冷却プロセスに入ることを第一とした。

一部の役員からは原子炉が暴走する前に、ホウ酸を海水に注入し、核分裂を抑え、早期に原子炉を冷却するのが最優先ではないかとの意見が出た。

しかし、それではその原発は二度と使えなくなってしまい、廃炉となってしまう。

社長は、追加で原子力発電所を建設する時間とコストを考え、原子炉をできるだけ傷めない可能性を残した。

実際、日本では原子力発電所の候補地を選定し、地元の許可を得て、正式に建設が始まるまでには30年くらいかかることは普通だ。

サラリーマン人生一回分の時間がひとつの原子力発電所を稼働させるのにかかる。

その苦労が社長の頭をよぎった。

「先輩が残してくれたかけがえのない福島原発を廃炉になんかさせてたまるか」

一方、発電所では電源供給が止まって3時間を過ぎた18時を回ってもも本店からの指示がでない。

現場では炉内の温度がいったん下がった後、徐々に上昇していくことに不安を募らせていた。

電源供給が止まり、原子炉内の冷却プロセスが止まっているからだ。

通常の発電状況では、300℃、70気圧の蒸気を発生させている。

しかし、炉内の温度は300℃を少し下回る程度、気圧もそれほど下がっていなかった。

非常用電源がとまり、正常な冷却プロセスになっていないにしても、オペレーターが原子炉圧力容器内の温度と圧力上昇のペースが速いのが気になった。

実は、地震後、原子炉は正常に自動停止に入ったものの、後から原子炉建屋を襲った津波の衝撃で原子炉圧力容器内の制御棒が何本か抜け落ちていたのである。

あとから分かったことだが、津波の衝撃で原子炉建屋内の配管に異常があり、循環ポンプも正常に作動しなかった可能性がある。

こうした理由から、原子炉内は温度が下がるどころか、発電をしている状況と変わりがなかった。

福島第一原発の1号炉は、沸騰水型軽水炉と呼ばれ、BWRと称される。

BWRとは、Boiling Water Reactorの略で、核分裂による熱を利用し、軽水(普通の水)を沸かし、蒸気にすることでタービンを回し、発電する汽力発電だ。

福島原発のBWRの設計はマークⅠとよばれ、BWRの中でも初期のエンジニアリングだ。

マークⅠは制御棒が脱落する事故が後を絶たない。

これは制御棒の操作が水圧駆動するためで、水圧のコントロール次第で脱落が生じるのである。

次世代のBWR、通称ABWR(Advanced BWR)では、この点をモータ駆動にするなど、改善が加えられている。

ただし、現在稼働しているABWRは柏崎刈羽、浜岡、志賀に一部あるのみである。

ほとんどはABWRではなく、BWRである。

原子炉内部では、軽水(ふつうの水)と制御棒が中性子の連鎖反応の速度を減速させる。

ウランの核分裂は、速度の遅い熱中性子の方が効果的に起こるためだ。

しかし、今回はその制御棒が正常に燃料集合体の間に挿入されなかったのである。

この現象はBWRでは問題になるものの、加圧水型軽水炉、通称PWRでは起きにくい。

PWRとは、Pressurized Water Reactorの略で、制御棒は原子炉圧力容器の上部から挿入される。

重力に逆らって制御棒を挿入するBWRとは設計思想が異なる。

余談ではあるが、PWRの技術は米国で最初に生み出された。

それは、原子力潜水艦用の動力向けが最初である。

潜水艦はいかに静かに海中を走行できるかが肝要である。

化石燃料などでエンジンを動かそうものなら、敵艦にすぐさまソナーで捕捉されてしまう。

また、PWRはBWRと違い出力調整が容易であり、潜水艦には向いているのである。

中国で現在建設されている原子力発電所は、PWRがほとんどである。

中国が原子力発電所をただの電源供給源とだけみていないということが感じ取れる。

話は、帝都電力会社本店に戻る。

本店へ制御棒が脱落したかもしれないという情報は、福島第一原子力発電所所長を通じて、原子力担当専務に報告された。

時間は19時を回っていた。

制御棒が脱落しているかもしれないという情報が取締役会で報告された。

社長は発電所の事態は想定し得る最悪のシナリオで進んでいることに気づく。

すぐに、事態を海江田経済産業大臣に報告するとともに、原子力安全・保安院に報告。

原子力安全・保安院とは経済産業省管轄の一機関であり、法令上は資源エネルギー庁の特別機関である。

原子力をはじめエネルギー施設などの安全規制、保安などを担当する。

地震発生から5時以上過ぎていた。

(地震が来たのでつづきは後ほど)

参考文献:

世良力「資源・エネルギー工学要論」東京化学同人

大前研一「福島原発で何が起きているのか-米スリーマイル島原発事故より状況は悪い」

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